フラワーショップ　ふじよし

こんにちは。

しばらく投稿できていませんでした。いかがお過ごしでしたでしょうか。当店では怒涛の年度末～年度始めの忙しい期間が過ぎ、先週～今週は少し落ち着いてきた、といったところ。ただいよいよ来月は母の“月”。そろそろ準備にとりかからねばと、疲れた心身をいたわりつつ、また気を引き締めていきます。

さて、今月・来月の店休日を記しておきましょう。

4月:21(木)・28(木)

5月:12(木)・19(木)・26(木)

なお、ゴールデンウィーク中の5/5(木・こどもの日)は営業します。

もちろん、今年も当店では昨年・一昨年に引き続き、母の月へのご理解と普及に努めてまいります。母の“日”翌日の5/9(月)以降のお母様への贈りものに関してもご相談くださいませ。

それから今回は、本を1冊ご紹介したいと思います。

「花屋さんが言うことには」

山本幸久著

ポプラ社

1,760円(税込み)

東京の郊外の住宅地に住む20代半ばの女性、君名紀久子。勤めていた会社を辞め、ひょんなきっかけで駅前の花屋でアルバイトを始める。働くなかで出会ったオーナー、同僚、顧客といった人々、そして店を彩るさまざまな花々・・・人と花との出会いや交流を通じ、自らの成長と進むべき道を定めて歩み出すまでを描いた、8篇の話からなる短～中篇小説集です。

この本を買ったのは3月の半ば、冒頭にも記したように多忙の盛りの時期。それでも買ったからには早く読みたい・・・というのが心情というもの。寝る前とか配達や引き渡しまでの時間調整といった、わずかのすき間時間を利用して少しずつ目を通していき、10日ほどで読了できました。

というわけで、本書は基本的にはとても平易で読みやすい文章で綴られていて、普通の大人ならスイスイと読めると思います。少々文が軽いかな?とも感じられるくらいで、私のように息抜きや余暇の時間に気軽に読むのに適しているでしょう。

しかしながら内容も軽いかというと決してそうではなく、読み応えはしっかりあります。収録された8篇のストーリーは完全に独立したものではなく、同じ登場人物なのはもちろん、他の篇と相互に関連し合っており、さらに先を読み進めるごとに季節の移り変わりが感じられ、篇のタイトルにもその季節を代表する花の名前がつけられ、その花に絡めたストーリーが展開する、という凝った構成。

加えて、花屋の仕事についても細かく描き込まれています。仕入れ、生花の水あげ、水替え、花束やアレンジメント製作のコツ、配達時の苦労談、母の日の人員不足・・・etc.まぁ中には「え?」と感じる記述もないではないですが、本書を書くにあたり、作者の方が入念に下調べや取材をされていることがうかがえます。

さらに、花屋にたいする提案や要望、『こんな花屋があったら・・・』ともとれる記述もそこここに。「フェイスブック」「インスタグラム」などのSNS、スマートフォンの使える機能といったITの活用、POPの作り方・書き方、花の定期便(サブスクリプション)の紹介、あとはキャッシュレス決済の特徴や仕組みも巧みにストーリーに絡ませていました。これらは当店でも取り入れられそうなアイデアもあり、私のような花屋の現役従業員が興味深く読める内容も少なくなかったです。そうそう『花天使』という組織も出てきたりして。

あと、作者である山本氏の文学への思い入れも感じられました。節句やそれにまつわる行事や故事を紹介しつつ、万葉集・雨月物語・正岡子規・寺山修司などさまざまな文学作品が作中に多く出てきます。【花鳥風月】という言葉があるように、本書を読めば花と季節がいかに芸術や文学と密接に結びついているかを再確認させてくれるはず。昨今多くの大学で文学部の縮小や統廃合が進んでいることを憂う文学部出身の私としては、こうした本書ならびに山本氏の姿勢におおいに同意し、花だけでなく文学を大切に身近に思ってもらえる方々が増えることを願っています。

お花が好きな方、また花屋が好き、もしくは興味がある方はもちろん、読書を趣味にしている方や軽い読みものでストレス解消したい方、仕事や今どきの社会や生活に密着した小説を探している方などなど、幅広くおすすめできる本でしょう。ゴールデンウィークのお供に、ぜひ。

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